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月刊「財界九州」にて紹介されました
月刊『財界九州』食楽園のページ

【食楽園】
~九州・沖縄生まれの美味かもん

エッセイスト:原 達郎
約400年前に豊臣秀吉が起こした朝鮮の役の古戦場を訪ねて、蔚山、ソウルなどを旅した。そして、注文しなくても毎食ごとに数種類は並ぶキムチにまぶされた唐辛子が、この朝鮮出兵の際に日本から朝鮮に伝わったことを知って驚いた。唐辛子の「唐」は、昔、中国や朝鮮を総称した字なので、こちらが本場と思い込んでいたからである。
キムチに欠かせない唐辛子の原産地は、ボリビア、パラグアイ、ペルー、ブラジル、アルゼンチンなどの中南米といわれている。そこから15世紀の大航海時代にヨーロッパへと渡り、ポルトガル、オランダ人によって東南アジアを経由して日本へもたらされた。
朝鮮の役のおりに日本軍将兵が唐辛子を必需品として携行したのは、薬用や食糧の腐敗防止のため、寒さから身体を守るための食用として、足と履き物の間に敷いて凍傷を防ぐためのものであった。現地ガイドさんの説明によると、鉄砲に仕込んで目つぶし弾として使用した、という言い伝えも韓国には残っているそうだ。
というわけで、キムチに唐辛子が使われるようになったのは400年ほど前のことで、歴史はそう古くはない。それまでのキムチは13世紀はじめの高麗朝時代に書かれた文献によると、三国時代の3世紀頃には野菜を貯蔵して食べる発酵食品、つまり日本の漬物と同じようなものが存在していたという記述がある。大根、キュウリ、ナスなどの野菜を塩漬にしたもので「沈菜(チムチェ)」と呼ばれていた。
それが唐辛子の渡米と白菜の栽培で劇的に変化していった。単純な漬物だったキムチにネギ、ニンニク、ショウガなどの薬味が入れられるようになり、塩辛のような各種海産物や果物も使われて、今日のキムチへと進化した。塩辛などの動物性タンパク質がキムチに入れられるようになったのは、唐辛子があってはじめて可能になった。キムチの熟成とともに増え続ける乳酸菌は、動物性タンパクをエサにしている。この動物性タンパクは酸化しやすく、腐りやすいものだが、それを防ぐのが唐辛子なのである。
唐辛子には腸の働きを正常に保ち、便秘を予防する乳酸菌の生育を進める働きがあるという。また、体内脂肪を燃焼して肥満を予防するカプサイシン効果や胃液の分泌を促進して食欲を起こさせる、カロチンなどのビタミンA効果も持っている。事実、韓国を旅行して女性の肌の白さと美しさ、スタイルのよさに感心させられたが、これは間違いなくキムチ効果によるものに違いない。
そんなによいことずくめのキムチだが韓国で食べたものをはじめとして、においや辛みが強かったり癖があったりして、もうひとつなじめなかった。買っても、半分も食べないうちに酸っぱくなり、キムチ鍋にするほかは処分することが多かった。そして先日、ついに理想のキムチに巡り合うことができたのである。
何気なく新聞を開いたとき、福岡県飯塚市にある「はるやま食品」の「春ばあちゃんの特製キムチ」という広告が目にとまった。直感的にピンとくるものがあったので、白菜キムチを取り寄せてみると、果たして期待以上の極上の味。キムチのおいしさの神髄を堪能させられた。
創業40年になる「はるやま食品」は、岩本国雄社長夫人・星枝さんの母、春山花子さん、つまり「春ばあちゃん」が家庭用に漬けたキムチを近所に分けていたことに始まる。そのおいしさが口コミで広がって、家業としてスタート。酸味料や防腐剤を一切使わず、韓国家庭に受け継がれている伝統手法で、唐辛子や生ニンニクをすり合わせた独自のキムチの素にその秘密が隠されているようだ。
『財界九州』2006.11 No.986 p194 「食楽園~九州・沖縄の美味かもん~」より引用

月刊『財界九州』
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